研究成果
北アメリカでの化石霊長類衰退の過程に迫る
An early to middle Uintan (Ui1b–Ui2) mammalian fauna from the upper unit of the middle Eocene Adobe Town Member, Washakie Formation (Wyoming, U.S.A.)
25/12/18
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中部始新統ワシャキー層産出の化石霊長類Ourayia cf. O. uintensisの右下顎第3大臼歯、標本番号FMNH PM 56654
(フィールド自然史博物館蔵、撮影:富谷 進)
背景
北アメリカは、過去において多様な霊長類を有しながら、それらすべてが絶滅した唯一の大陸です。その化石記録を丁寧に洗い出すことで、霊長類の衰退過程の普遍的な理解が深まることが期待されています。長年の研究から、中期始新世(約4,800~3,800万年前)以降の地球規模での寒冷化・乾燥化のもと、中・高緯度地域で森林が減少したことが霊長類の分布域の大幅な縮小につながったことが知られています。しかし、化石を産出する地層は多くの場合断続的であるため、地域レベルで霊長類を含む哺乳類相が環境変動にどのように応答したかは十分に理解されていません。
研究成果
当センターの富谷進特定助教を含む日米中3か国の国際研究チームはアメリカ西部・ワイオミング州ワシャキー盆地の中部始新統ワシャキー層最上部から見つかった哺乳類の化石標本を新たに同定、詳細に記載し、ロッキー山脈中央地域での哺乳類相変遷の記録の解像度を向上させました。これまでの研究から、ワシャキー盆地では湖系の縮小とともに霊長類が4,600万年前ごろを境にほぼ消滅したことが報告されていましたが、本研究では、その後も一部の樹上性小型霊長類が存続していたことを明らかにし、地域レベルでの古環境と哺乳類相の複雑な動態の一面を示しました。
今後は化石の安定同位体解析などを通して同層の古環境をより精密に復元することで、哺乳類の多様性が変動する機構の解明を目指しています。
本研究は日本学術振興会科学研究費助成(課題番号22KK0048)などを受けて実施されました。
本成果は、2025年11月21日に古脊椎動物学会(Society of Vertebrate Paleontology)の機関誌「Journal of Vertebrate Paleontology」オンライン版に掲載されました。
関連リンク
当該科研費課題情報:https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22KK0048/
Journal of Vertebrate Paleontology


