10月22日に犬山キャンパス一般公開が開催されました。新しい組織となってからの初めての公開行事でしたので、準備する側としては緊張したり、予行演習通りに行かず焦ったりしましたが、寛大な参加者の皆様のおかげで無事実施できました。感謝申し上げます。
また、依頼していたアンケートの回答もでそろったので、参加者の方々の感想も紹介しながら当日の様子についてリポートします。
当日は、20名の方が犬山キャンパスに来られ、Zoomでは約20名の参加がありました。現地参加でもZoomでも遠くは関東や関西、四国、近くは犬山市や近隣の小牧市、名古屋市、各務原市等々から、10代〜70代までの幅広い年齢層の方々にご参加いただきました。
まず、犬山キャンパス一般公開実行委員がスケジュールや写真撮影の注意事項などを説明しました。次に、ヒト行動進化研究センターのセンター長・中村先生のビデオによるご挨拶に移ろうとしたとき、トラブル発生 OMG! Zoomではビデオが見えるのに、大会議室のスクリーンには映らないのです(午前中のテストではうまく行ったのですが!)。
総務掛の担当がトラブルシュートしてくださり、無事ビデオによるセンター長挨拶をご視聴いただきました。犬山キャンパスには5つの部局が入っており、それぞれの所属研究者が専門分野に注力する一方、緊密に連携し、また世界に誇るリソースを活かして、総合霊長類学を目指しているという内容でした。アンケートでは、このような話が聞けて安心したという感想を書いてくださった方もおられました。
続いては、古市先生の講演、「類人猿ボノボ:メスたちがつくる平和社会」です。「先生がマスク無し&笑顔満載で講演されたことがとても良かったです。」(注:古市先生と受講者の皆さんの距離は十分にとり、部屋の換気もしておりました。)、「ホモサピエンスの起源のお話や、チンプとボノボの性格の特性のお話が、素人でもわかりやすく興味深いお話でした。小学生の子供でも理解し楽しめたのがよかったです。」、「チンパンジーやボノボの社会の安定度は性交渉や発情期といった性の問題が大きなファクターの一つになっていることがわかった。面白かった。」、「大変興味深いお話を拝聴でき感謝いたします。種の保存という意味も含め、子殺しの動画は衝撃がありましたが、人類の進化や、野生の厳しさを感じることができました。」等々、紹介しきれないぐらい好評をいただきました。古市先生も会心のトークができたと思われていることでしょう。
「類人猿ボノボ:メスたちがつくる平和社会」という演題で講演する古市剛史先生。
新型コロナウイルスは犬山キャンパスで飼育されるサル類にも感染します。そのため、ここでは通常よりも厳しいコロナ対策がとられています。そのひとつとして、会場からの質疑応答ではマイクを使わず質問していただくことになりました。ところが、質問を復唱してから回答する、というのをしばらく忘れていたため、Zoom参加の方からチャットでご指摘を受けました。また「パソコンの音量をいっぱいにしたのに、聞き取りにくかった。講演自体の音量が小さい。」という指摘もありました。すみませんでした。今後の改善点とさせてください。質疑応答はとても活発に行われ、予定時間を5分ほど延長しました。
質疑応答の終了後、Zoom参加の皆様とはお別れしました。来年度以降もハイブリッドで開催しますので、犬山キャンパスへ来られない方は、どうぞZoomでご参加ください。
10分ほどの休憩のあと、現地参加の方々を6〜7名の3班にわけて、所内見学を行いました。見学場所は、新棟4階にある骨格標本室、犬山キャンパスレストランの隣の展示室、キャンパス北西に位置する第1放飼場でした。今年は、各見学場所の説明を大学院生にやってもらいました。
実験的研究には野生のサルを使うべきではないという考えをいち早く取り入れ、霊長類研究所時代から約50年にわたりニホンザルとアカゲザルを飼育繁殖させています。第1放飼場のニホンザル(高浜群と若桜群)の説明を担当したのは、大学院博士課程2回生の徳重江美さんでした。
第1放飼場のニホンザル高浜群の説明をする大学院生の徳重江美さん。
徳重さんは、放飼場のアカゲザルにつく寄生虫の生活史とサルの個体間の関係を研究しています。この日は、第1放飼場のニホンザルが小石を動かして遊ぶ、「石遊び」と呼ばれる行動や、環境エンリッチメントの一つとして、サルに餌を探させるような工夫を技術職員がしていることについての説明がありました。
骨格標本室には、大型類人猿、ニホンザルとその近縁なマカクザルやヒヒ、コロブスなどの旧世界ザル、リスザルやタマリン、マーモセットなどの新世界ザルの標本が保管されています。中でもニホンザルの骨格標本に関しては、世界一のコレクションを誇ります。
ゴリラの頭骨を持ち、アゴを動かす筋肉の説明をする大学院生の中村冠太さん。
「あなたはどんな研究をしているのですか?」と、ゴリラの頭骨の説明を終えた大学院修士課程2回生の中村冠太君に質問したのは、おそらくリピーターさん。アンケート結果でも、約半数の方が霊長類研究所時代の公開行事に参加したことがあるとのこと。彼は、キツネザルの喉頭の機能について研究をしています。「そのような研究をするきっかけは?」と、普段されることのない質問にも丁寧に答えていました。
展示室には、様々な人類の化石レプリカや日本の霊長類学をスタートさせた今西錦司先生や伊谷純一郎先生のフィールドノート・双眼鏡等々、チンパンジーの道具使用に関係する石やナッツの標本、さらにチンパンジーの認知科学研究で使われるタッチパネルが展示されています。大学院修士課程2回生の豊田直人君は、「自分の専門とは違うのですが、」といいながら、人類各種の化石の特徴を説明しました。さらに、150万〜160万年前の人類の一種でトゥルカナボーイと呼ばれるホモ・エルガスターとチンパンジーの大腿骨を比較しながら、直立二足歩行を可能にする形態的な特徴をとてもわかりやすく解説しました。
参加者の質問に答える大学院生の豊田直人さん(左)。
見学場所の説明を大学院生に任せたのは今回が初めてでしたが、事前の準備をしっかりやってくださったようで、どの見学場所でも好評でした。アンケートでも、「丁寧に担当の方々や研究生の皆さまからご説明頂き、熱い思いが伝わって参りました。」など、大学院生へのお褒めの感想をいくつかいただきました。また、「質問しながら施設を見学することができてとても面白かったです。」と、現地開催ができてよかったと思える感想もいただきました。Zoom参加の方からは「第二部の施設案内もオンラインで配信して欲しかったです。」と、ちょっとテクニカルにハードルが高いリクエストがありましたが、これは検討すべきことと思います。
新型コロナ禍のもと、外部の方を犬山キャンパスにお迎えするのは実に3年ぶりでした。全国的な感染状況を注視しながら、いろいろな方に気軽にご参加いただけるようにとZoom併用で実施したのですが、こちらが想定したとおりには行かず、皆様にはご満足いただけなかった点もいくつかあったと思います。「もっといろいろな研究内容の話しを聞きたい。」とか「チンパンジーに会いたい」など多くのご意見をいただきましたので、次回の開催に是非参考にさせていただきます。
今後とも、京都大学犬山キャンパスの研究活動に、ご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
2022年度犬山キャンパス一般公開実行委員会
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