top of page

研究成果

予期せぬ報酬がサルにもたらす"かゆみ"?

Monkeys increase scratching when encountering unexpected good fortune

25/3/14

ーモセット大腸オルガノイド(緑:上皮細胞、赤:増殖性の細胞)一部の細胞は増殖をやめて成熟した細胞に変化していることが分かる。

実験の概要

背景
自分の身体をひっかくセルフスクラッチ行動は、ヒトを含む哺乳類で広く観察される行動です。これまで、この行動は不安や恐怖などのネガティブな情動やストレスと強い結びつきを持つと考えられてきました。しかし、近年では、スクラッチとネガティブ情動との結びつきを否定する研究結果や、むしろポジティブな情動と関連する状況でスクラッチが増えることを示す結果も報告されています。

このように、セルフスクラッチ行動の心理学的な基盤については未解明な部分が多く残されており、そのメカニズムや機能の解明が求められています。

研究成果
壹岐 朔巳 特定研究員と足立 幾磨 准教授は、ニホンザルを対象にタッチパネルを用いた認知実験を行い、セルフスクラッチの発生に関連する心理学的メカニズムを検討しました。

実験の結果、サルが予期せず通常の8倍の分量のエサ報酬を獲得する「"幸運"条件」では、通常通りの分量の報酬を獲得する「統制条件」と比較して、セルフスクラッチ行動の頻度が有意に増加することが明らかになりました。

 

著者らは、この結果等を踏まえ、自分で自分の体をひっかくことで高い予測性を持つ自己刺激を生み出すセルフスクラッチ行動が、予期せぬ場面に遭遇した際の心理的な葛藤に対処するためのメカニズムとして機能している可能性があると議論しています。本研究は、もともと外部寄生虫などに対する防御メカニズムとして進化したと考えられるスクラッチ行動が、後に複雑な心理的機能を獲得したプロセスを理解する上での手がかりを提供するものと期待されます。

本成果は、2025年3月11日に英国の国際学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

Scientific Reports

京都大学ヒト行動進化研究センター

484-8506 愛知県犬山市官林41-2 京都大学犬山キャンパス

©2022 by EHUB

bottom of page