研究成果
キツネザルの顔のかたちの謎:体の大きさがその進化を左右する
Distinct pathways for diversification of craniofacial morphology driven by size-related constraints in Madagascar primates
25/9/18
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クロキツネザル(撮影:豊田 直人)
背景
キツネザルは、マダガスカルだけに生息するユニークな霊長類です。大陸から切り離された島という環境のなかで、100種類以上もの多様なキツネザルの仲間が進化してきました。たとえば、白黒のシマ模様の尻尾を立てて歩くワオキツネザル、木々の間を大きく跳びながら高い声で鳴くインドリ、長い中指で木の奥の虫を器用に捕まえるアイアイ。その姿や暮らしぶりのバリエーションは驚くほど豊かです。
研究成果
当センターで研究を行う 豊田直人 さん(理学研究科博士後期課程)は、この多様なキツネザルたちの頭蓋骨の形に注目し、「顔のかたちはどのような規則に従って進化してきたのか」を調べました。従来から、夜行性の種は目が大きい、硬いものを食べる種は顎が発達している、といった行動や生態に応じた顔のかたちの進化はよく知られていました。
今回の統計的解析によって、新たに次の二つが明らかになりました。
・体の小さなキツネザルは、食べ物や行動パターン、活動時間といった生態が違っていても顔のかたちがよく似ている。
・一方で、体の大きなキツネザルほど、他の種と異なる独自の顔のかたちをもつ傾向がある。
つまり、顔のかたちの進化のしやすさが、体の大きさによって左右されることが示唆されたのです。
数千万年にわたるキツネザル類の進化の歴史の中には、夜行性だから目が大きい、硬いものを食べるから顎が頑丈といった分かりやすい進化の規則だけでなく、まだまだ隠れた規則があるのかもしれません。このことは、私たち人類の進化でも同じです。ヒトの顔のかたちが、なぜ今のようになったのか?その過程の中にも、きっと私たちがまだ知らない規則や仕組みが隠されているのでしょう。
本成果は、2025年9月5日にアメリカ進化学会(Society for the Study of Evolution)の機関誌「Evolution」オンライン版に掲載されました。
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